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2006年1月12日 (木)

13.ハーマン・カーン

『今度、ハーマン・カーンという人が来るんやけどな、君、どういう人か知ってるか?』

これは、あの松下幸之助翁が生前中、当時の秘書・江口克彦氏(現PHP研究所代表取締役)に発した言葉です。

実は、この言葉が私の従業員教育の原点となりました。初めて人を雇用した当時、それは救いの言葉でした。

長くなりますが、ハーマン・カーンの話を続けます。

幸之助からのこの質問に対し、たまたまハーマン・カーンを知っていた秘書の江口氏は立て板に水で巧みにこう応えたのです。「はい、ハーマン・カーンという方はアメリカのハドソン研究所の所長で、21世紀は日本の世紀であるといっている歴史学者です。」

幸之助は「そうか、わかった」とうなずきながら返事をした。

ところが、またその翌日、幸之助が江口氏にまったく同じ質問をした。江口氏はアレッと思ったが、また同じように応えた。

そして、またその翌日、幸之助はまったく同じ質問を江口氏にした。さすがの江口氏も腹が立ったが、憤りを抑えて前日と同じように回答をした。

さて、その日の夕方、江口氏はふと気づいたのである。                  「幸之助は、私に質問したことを忘れていたのではなかったのだ。なんと私の回答が不十分だったのだ。 もっと詳しく調べなければ ・ ・ ・ 」 と。

さっそく、江口氏は書店でハーマンカーンのぶ厚い本を購入し、3枚のメモにまとめた。それにあきたらず、読み上げてテープレコーダーで録音もした。なんと終わったのは明け方の4時半である。

仮眠をとって幸之助を出迎え、松下からのまさかの4日連続の質問を待ち、したためていたメモで説明をした。別れ際に録音したテープも渡した。

そしてその翌日、幸之助がなんか変だった。  「はたしてテープは聴いてくれたのだろうか ・ ・?」

沈黙のあと、「君、いい声しとるなあ」。  なんと、これが経営の神様、幸之助の応えだった。

その応えは、「君、よう調べてくれたなあ。ほんま、ありがとう。」そういう意味だったのである。

江口氏が感激したのは勿論だが、私も不覚にも目頭が熱くなってしまった。

「人を育てる」ということは、こういうことなのか! しばらく震えが止まりませんでした。

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